気候変動への取り組み
基本的な考え方
地球温暖化の一因とされる人為起源の温室効果ガスの排出量は増加の一途をたどっており、2015年12月COP21で採択された「パリ協定」などに代表されるように、気候変動への危機感は高まる一方です。
とりわけ二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスの76%(IPCC第5次評価報告書より)を占める主要な排出源であり、産業活動においても確実な削減が求められております。
当社は、「社会的価値向上」と「企業価値向上」の両立をグループ方針とし、社会課題解決と企業成長の同時実現を目指しております。私達は自動車産業ならびに世界全体における社会課題の一つである気候変動問題の解決に向けて取り組み、自動車産業の脱炭素化に貢献します。
TCFDへの対応
当社は、気候変動が企業の財務に与える影響の分析・情報開示を推奨する提言を行うTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候変動関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに基づき、情報開示に取り組んでおります。TCFDは、2015年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)により設立され、TCFDによる提言が企業・団体内における情報開示の推進や、金融機関と事業会社との間の対話促進のきっかけとなることが期待されております。
ウイルプラスグループは、2022年8月に策定した「中長期戦略」で「2030年度のGHG排出量(Scope1+2)を2022年度比較で50%削減」することを掲げており、気候変動による事業へのリスクと機会を評価し、適切な情報開示を行うことが、これからの企業の成長と持続可能な社会構築の両立には欠かせないと考え、順次取り組みを進めております。
ガバナンス
1. 取締役が気候変動課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象
当社では、気候変動課題に関する議題について、毎月開催する業務執行の最高意思決定機関である取締役会にて随時協議及び決議の機会を設けております。また、取締役がメンバーを務める「サステナビリティ委員会」と「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」においては四半期に一度以上のモニタリング・監督及び重要な気候関連及びリスク関連の事案について取り組みの深化を図っております。
両委員会の役割、活動内容等については、こちらをご参照ください。
当社は、取締役候補の選任に当たり、取締役に期待する専門性及び経験等についてスキルマトリクスで明確にしており、その項目の一つに「サステナビリティ」を設定しております。事業活動を通じた環境課題解決に向けて、具体的な行動計画や定期的なレビュー、継続的改善の取組み状況を適切に監督できる取締役を選任することで、環境課題に対する取り組みの実効性を高めております。
2. 経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス、モニタリング方法
当社では、代表取締役社長が取締役会の議長を担うとともに、サステナビリティ委員会およびリスクマネジメント・コンプライアンス委員会の委員長も担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。
サステナビリティ委員会ならびにリスクマネジメント・コンプライアンス委員会において審議された事項については定期的に取締役会に報告されます。
戦略
気候変動に対する移行計画
当社は、2022年8月に策定した「中長期戦略」の中で、1.5℃の世界に整合する移行計画として、当社グループ目標及び目標達成のためのKPIを開示しております。
グループ目標 |
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当社のGHG排出量(Scope1+2)を2022年6月期比較で、2030年までに50%削減(年率6.25%) |
達成に向けたKPI | 内容 |
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①店舗で営業活動に使用する社有車の低炭素自動車(EV/PHV)の比率 | 2030年度までに80%以上、2050年度までには限りなく100%まで高め、店舗で使用するガソリンを極限まで低減することでScope1を0(ゼロ)に近づける |
②使用電力における再生可能エネルギー導入率 | 2025年までに100%まで引き上げることで、Scope2を0(ゼロ)にする |
当社グループのGHG排出量の大半(90%以上)は「店舗が使用する燃料(主にガソリン)」及び「本社及び店舗が使用する電力」から排出されるため、当社はKPI①及び②を100%まで引き上げることで、2050年までにネットゼロを達成することを目指しております。
リスク管理
1. 短期・中期・長期のリスク、機会の詳細
当社グループは、気候関連リスク及び機会についての事業活動への影響が長期間にわたる可能性があることから、適切な期間設定を検討することが重要であると考えております。これを踏まえ、当社グループの時間軸定義は中長期経営計画の実行期間に基づき下表のとおりに設定しました。
気候関連リスク・機会の検討期間 | 当社グループの定義 |
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短期 | 1年未満 |
中期 | 1~3年 |
長期 | 4年以上 |
2. リスク、機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
当社は、当社グループの事業及びステークホルダーにとって重要となる可能性のある気候変動リスク・機会を顕在化し、それらを可能な限り定量化することで、財務基盤への影響を把握することに努めております。2030年時点の世界を想定した当社グループの戦略及びソリューションを検討するため、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する既存のシナリオを参照の上、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び新たな気候関連政策・規制が導入されない世界を想定した4℃シナリオの二つの世界を想定しております。
想定される世界 | 参照シナリオ群 |
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1.5℃/2℃未満シナリオ | IEA:「Net-Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」 |
4℃シナリオ | IPCC:「Representative Concentration Pathways(RCP8.5) |
当社グループの重要な気候変動関連のリスク、機会
項目 | 時間軸 | 対応策 | |
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移行リスク (1.5℃ シナリオ) |
日本での炭素税導入に伴うコスト増加 | 中期 | 保有車輌のEV化 再生可能エネルギーの導入推進 |
自然災害が取扱いブランドメーカーの生産に影響を与えることから発生する当社仕入リスク | 中期 | 顧客提案車種のブランド変更 (同一ブランド間、異なるブランド間、中古車) |
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再生可能エネルギー由来の電力使用に伴うコスト増加(使用量の増加、電気料金の高騰、グリーン証書購入コスト増加) | 短期 | 省エネ設備導入推進 電力使用量自体の削減推進 |
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物理リスク (4℃シナリオ) |
気候変動(異常気象等)による自然災害(台風、豪雨、洪水)の発生に伴う営業店舗の損害および営業活動制限に伴う収益の減少 | 長期 | 車輌保管拠点の分散 気象情報により水害リスクが高まったと判断された場合の車輌移動 高リスクエリアの自治体が行う治水事業への寄付 中長期計画推進による脱炭素化への貢献 |
機会 | 低炭素製品のラインナップ拡張に伴う顧客ロイヤリティの向上、及び環境への関心が高い新規顧客の獲得による収益の増加 | 長期 | 社有車の低炭素自動車(EV/PHV)比率の向上 急速充電器の設備推進 |
再生可能エネルギーの使用による脱炭素化への貢献及びガソリンコストの削減 | 長期 | 再生可能エネルギーの導入推進 急速充電器の設備推進 |
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環境課題への対応に伴うレピュテーションの向上及び株価の上昇 | 中期 | 低炭素自動車(EV/PHV)普及に向けた投資推進による店舗エリアの脱炭素化への貢献 環境課題対応についての適切な情報開示 |
自然災害等の気候変動に関連するリスクは、企業活動の継続、企業資産の保全、社会的責任の順守を目的としたリスクマネジメント・コンプライアンス委員会によって以下の通り管理しております。
1. 自然災害リスクの特定・評価プロセスの詳細
リスクの洗い出しを行い、発生頻度、発生時の影響度を考慮して分類し、
- 回避(リスクを発生させる活動を中止するなどして、可能性を遮断する)
- 低減(リスクが発生する可能性を減らす)
- 移転(保険や契約などでリスクを第三者に移す)
- 保有(発生しても許容範囲として受け入れる)
の考え方をもとに、当社の定める短期・中期・長期の時間軸で評価を行っております。
2. 全社リスク管理の仕組みへの統合状況
リスクマネジメント・コンプライアンス委員会は、当社代表取締役社長を委員長とし、当社取締役を委員としております。複数の部門を横断した全社的なリスク管理プロセスに統合されており、当社グループの中期経営計画に反映し、対応しております。
指標及び目標
1. 気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するために、上記の通りScope1,2排出量及び事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率の2つの指標を定めております。
また、役員報酬のうちの業績連動型株式報酬は、その事業年度の業績連動型株式報酬制度額を決定する非財務指標の一つとして、気候変動情報開示の有無を設定しており、気候変動問題に関する取締役の責任を明確化しております。
2. 温室効果ガスの排出量
当社グループのGHG排出量実績につきましては、こちらをご参照ください。
環境データ